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十二 ニューリーダーの誕生 二〜三日たって、銀太郎が一日の仕事を終えて、事務所に戻ってくると、大川運行管理が 「本社の加藤人事部長から電話がありましたので、連絡をとってください」と言うのである。 銀太郎は驚いた。この前、労使協議会に出席したとき、顔を合わせてちょっと挨拶した程度にすぎないのに、直接電話があるなんて、なんの用だろう、何か悪いことをしてしまったのだろうか、と心配になった。事務所の人たちも、心なしか不安げに銀太郎を見ている。 銀太郎はしかたなく本社の人事部に電話を入れた。 「あなた方のこの間のレポートは、実によくまとめられていましたね。誰に対しても説得力のあるものだったと思いますよ。会社への問題提起として受け止めて感謝しています」と、加藤は電話口で言った。 加藤人事部長と話らしい話をするのは初めての銀太郎だったが、落ち着いた知的な雰囲気が感じられるその口調に好感を持った。加藤部長は言葉を続けて、 「今回、問題を起こした例の会社は破産に追い込まれ、従業員の雇用が失われる事態になりました。もしかしたら当社がそうなるところだったと思うと、まったくぞっとしますよ」と言う。それから加藤氏は本題に入った。 「あなたが伯父さんとの約束で、組合役員を一年でやめると言っている、という話を聞きましたが、薫には私から伝えておきますから心配は要りません。何事も、石の上にも三年というではありませんか。三年は頑張ってみてください」 銀太郎は、意外な人物に激励されて嬉しかったが、人事部長が組合役員になることを勧めるのは不思議だという気もしたので、すこし嫌味かもしれないとは思ったが質問をしてみたくなった。 「私が組合役員を続けると、会社とも人事部長とも、再び対立する局面を迎えることになるかも知れませんが、それでもよろしいのですか」 すると、人事部長は言った。 「そのことは十分承知しています。しかし、それが組合の役割でもあるのです。お互いに会社を大切に思っていることは同じで、戦略は一致しているのです。ですから、戦術の対立をおそれることはないんです。お互いに切磋琢磨していこうじゃありませんか」 銀太郎はその言葉にいたく感心し、まだまだ自分は若輩ものだなあ、と思わされた。 二×××年 九月。全昭和食品労働組合栃木支部大会で、銀太郎が支部執行委員に選ばれた。 ユニオン・リーダー「銀太郎」の誕生である。 労使交渉・協議の進め方 -ユニオンリーダーのためのコミュニケーション交渉術- 監修:西尾 力 / B5版 67頁 定価 1,000円(税込) ユニオンリーダー実践マニュアルpart2 経営側を顧客ととらえる発想とマネジメント力で労使対等を実現!! 労働組合活動を再構築する為にサービス・マーケティングという視点ら解決策を提示!

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