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第五章 労働組合はチクチク と警告を発する 一 再開された調査活動 「はい、銀太郎です。いえ、こちらこそ。そうですか、会社の見解はやはり同じなんですね。わかりました。いえ、私のほうは大丈夫です。大川運行管理には理解していただいていますので。ご報告ありがとうございました。わかりました、出来るだけやってみます。それでは、失礼します」 組合の事務所で、渡辺書記長から電話で連絡を受ける銀太郎だった。 結局のところ会社の見解は、問題発覚の当初と変わりがなかった。 『作業方法の変更はあるものの、法律違反ではない。だから問題はない』というものだった。 しかし、組合としてはこのような会社の返答で、この件を『問題はない』『一件落着』とは片付けられないので、もっと詳しい事実を出来るだけ多く集めておくように指示された。 また、銀太郎に今回のことで会社からプレッシャーが再度かからないか、執行部が心配していることが伝えられた。もし、そのようなことがあったら、すぐ連絡してほしいと。 組合としては、組合活動をしたことで、処遇が不利になるようなことはさせない。『全力を挙げて守るから』とのメッセージが渡辺中央書記長から伝えられた。 銀太郎は嬉しかった。 銀太郎にとって、会社にはない、仲間を大切にする労働組合のあたたかさが、今回のことで身に沁みたのである。 銀太郎は、ここまでの経過の中で思うところがあった。 会社を動かすには、単に問題点を指摘するだけではダメだ。問題点の指摘をしても、会社に も必ず言い分があり、双方の見解の違いを確認するだけで終わってしまう。全体の背景をしっかり把握して、どのようにするのがよいのか、解決策を提示するようにしないとだめなんだ、とつくづく実感したのである。 渡辺中央書記長の指示もあったので、支部三役と相談し、もっと全体の背景を丹念に調べること、そして、望まれる解決策の方向性をも同時に探ることにした。 丸山支部長も絹田委員長から直々に同様の指示を受けていた。 四月上旬の金曜日の夜、栃木支部の支部執行委員と職場委員が参加する支部委員会が開かれた。 その会議の中で、今回の栃木工場の合理化策が出てきた事情をまとめ、組合本部を通して経営陣に提出する調査報告書をどのように作成するかの議論がされた。 「現場の組合員でもある末端管理職、事務所の主任職や係長職、工場の班長職へのアンケートとヒアリング調査を行ったらどうでしょうか。彼らの意見や思いを載せた報告書が、一番説得力のあるものになると思うのです」と、研究所の職場委員である白鳥が提案した。 さすがに、日頃調査分析の仕事をしている人だけあって的を射た発言だ、と全員が賛成した。 執行委員と職場委員全員で手分けして、組合員層の管理職に対するインタビューとアンケート調査を行うことが決まった。 銀太郎は率先してその調査活動の先頭に立った。 十人(パートなども含む)以上が働く事業所は、就業規則をつくって労働基準監督署に届出をしなければならない。作成・変更するときは働く者の過半数を代表する者の意見を聞くことが求められている。労働組合と経営側が決めた「労働協約」がある場合は、就業規則よりも「労働協約」が優先適用される。ひとくち用語解説… 「就業規則」

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