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十三 変わらぬ現実 労使協議会終了後、専務室に三浦品質管理部長が呼び出された。 自分のメンツをつぶされたと思った荏本専務は、三浦品質管理部長を厳しく問いただした。 「君、定められた点検・清掃作業を省略しているというのは本当なのか? 賞味期限の日付を十二時間先延ばしにして刻印しているというのも事実か? 君ね、これは法律違反になるんじゃないか。それをわかっていてやっているのかねっ、ゲホッ」 こめかみに青筋を立てながら三浦を問い詰めた荏本専務は喉がからからになり、テーブルの上の湯飲みをぐいと掴んで残っていた茶を飲み干した。 「どうしてこんな暴露話が、私の知らぬところで、しかも労使協議会の場で出てくるんだ」 三浦品質管理部長は丸い額ににじみ出てくる汗を、ポケットから出したハンカチでぬぐいながら 「至急調べて報告いたしますので」と答えるのが精一杯であった。 三浦品質管理部長は自分の机に戻るや否や、栃木工場長の原田に電話を入れた。 問いただす三浦品質管理部長に対して、 「あのですね、お、おっしゃられていることは、事実と違いますよ。確かに、不要な作業を見直して改善活動を進めてはいますが、法律で定められた絶対必要な点検・清掃作業をやめたなどという事実はありません。また、賞味期限の問題も、しっかりとルールに基づいて運用しておりまして、法律に反することなどいたしておりません、はい。なにか、話に尾ひれが付いて、誇張されて報告されている気がするんですが‥‥‥」 原田工場長の必死の言い訳が展開された。 「わかった、今の話を荏本専務に私からしておく」 三浦品質管理部長の返答に、ホッと胸をなでおろす原田工場長だった。 原田工場長は嘆かわしかった。 本社からのコスト削減のきつい要求を前にして、その達成の努力を行えば、今度はそれをとがめられる。 「じゃあ、一体どうやってコスト削減をしろというんだ。本社の連中は気楽でいいよな」と、腹立ちを覚えるのだった。 三浦品質管理部長から報告を受けた荏本専務は中岡社長に、組合から指摘されたような法律違反の事実はない、との報告を入れる。 「労働組合は本音のところは、構造改革に反対に違いないんです。しかし、正面きって反対できないので、今回のようないちゃもんをつけてくるんですよ」 また、加藤人事部長も荏本専務からの報告を受けて、組合本部の絹田委員長に、 「調べましたが、法律に違反するような事実はありませんでした」と、電話で報告をしてきた。 経営者・管理職のための労働組合活用術 著書:西尾 力 / B5版 106頁 定価 1,400円(税込)今、日本の労使関係に何が起こっているのか?優れた経営を実践する企業の背景には、これまで想像もしなかった新しい労働組合の存在と活動があります。本書は労働組合が「人・モノ・金・情報」に次ぐ第5の経営資源であることを証明しようとするものです。 問題解決型の「21世紀型労使関係」を再構築するために、組合幹部から経営者や新旧管理職向けに熱いメッセージとして贈呈ください。

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