銀太郎広告アリ全ページ
14/29

七二 支部労使協議会での追及 三橋の説明に一旦は引き下がったものの、それでも納得できない銀太郎は、組合の支部三役に相談した。 銀太郎からの報告を受けた支部三役は、それをそのまま見過ごすのはまずいのではないか、という判断をし、十一月下旬に開かれる栃木工場の労使協議会で取り上げてみようということになった。そして労使協議会には銀太郎も同席することになった。 支部労使協議の日がやってきた。 会社側からは、原田工場長、川村製造部長、大塚総務部長と岡本総務課長の四名が出席。 組合からは、丸山支部長・室橋副支部長・市川書記長と鈴木・高山・西野執行委員三名。それと、職場委員の代表として物流から銀太郎、製造から三橋、さらに研究所の白鳥と事務所から細越、以上四名の職場委員。合計十人の出席である。 まず組合から会社側に対して、今期の支部役員体制と、今期の労使協議会に出席する職場代表として四名の紹介を、市川書記長が行った。 銀太郎もいつもの調子で 「吉川銀太郎です。よろしくお願いします」と挨拶した。その声の大きさには思わず労使双方から笑みがこぼれた。 会社からは、会社全体と栃木工場の上半期の収支状況が大塚総務部長から報告された。 三橋職場委員が言っていたように、ここ三年間の赤字が続いていること、上半期の予算も未達に終わっていること、下期もこのままでは苦戦が予想されることなど、このままいったら四期連続の赤字に栃木工場は陥るという厳しい見通しが報告された。 会社全体として、ここ三年間減収減益であることも、工場長より付け加えられた。 そして、さらに原田工場長は、栃木工場の最大の課題は製造および物流コストの削減と生産性の改善であり、この課題に対する労働組合の協力をお願いしたいと言葉を続けた。 一方、組合からは丸山支部長が発言した。現在、全国の職場で安全衛生の総点検活動を行っているが、取り組みはまだ途中であり最終集約には至っておらず、それがまとまったら会社に対しての要望書という形にして提出する予定であること、さらに続けて当工場内で思わしくない話を聞いたと、例の事件の話を切り出した。 銀太郎は、会社側の反応はどんなだろうかと、興味しんしんで見守っていた。 大塚総務部長と岡本総務課長は寝耳に水といった様子だったが、原田工場長と川村製造部長の驚き方は少し違っていた。 すかさず、川村製造部長が反論してくる。 「確かに不要な作業は省略しているが、それが即、法律違反ということはないですよ。安全衛生には万全の体制で臨んでいるんです。賞味期限の刻印を変更する計画も、社内ルールの一部変更だけであって、これも問題はありません」 原田工場長からも、次のような返答が付け加えられた。 「生産性とコスト削減の取り組みは、従業員からの改善提案・アイディアをベースに進めており、会社が一方的に命令してやっているものではないので、ご理解をいただきたい」 組合側としては、これは合法的なもので、違法性は一切なく、品質管理・安全衛生にもなんら問題はないと言われてしまうと、これ以上追及はできない雰囲気になっていた。 話はそれ以上進まないまま労使協議会は終わってしまった。 著者:西尾力 / B5版 228頁 定価 2,100円(税込) 続21世紀型労働組合の 理論と手法労働組合活動へ情報発信を続けてきた西尾力がこれまでの原稿をまとめて本にしました。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です