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銀太郎が組合の代議員に選ばれ、今日は組合の大会に出席した帰りだという報告を受けた伯父さんは明らかに困惑した表情で 「そう、組合の代議員にね‥‥‥」 と言いながらタバコを口にくわえ、火をつけた。 「あなたも、銀ちゃんを見習ってタバコやめたら」話題を変えさせるつもりなのか、伯母さんが言った。 しかし、伯父さんは黙々と煙を吐く。薫伯父さんの脳裏には、あの若かりし頃、一九六十〜七十年代の学生運動や労働運動の、スト・デモの激しかったさまざまな場面がよみがえってきた。薫はふと、銀太郎が小説『沈まぬ太陽』を地でいくようなことになってしまわないかと、不安になったのである。 「銀ちゃんは人がいいから、頼まれたら断れないのよね。そのDNAはあなたと一緒だわね」 ため息まじりに言う伯母さんの言葉から、自分が(利用されているのでは)と心配されていることがわかった。 「母さんも、伯父さんにだけは、迷惑をかけないようにと言ってました」 銀太郎が遠慮がちに小さな声で答えると、伯父さんは言った。 「わたしも、労働組合の必要性や現在の組合活動がどのようなものか、それは十分承知している。だからそのことを心配しているんじゃないんだ。ただね‥‥‥」 伯母さんは、銀太郎の顔と夫の顔を交互に覗き見ている。 「組合活動で時間をとられたら、そのぶん会社の仕事ができなくなるだろ。銀太郎に対する評価が下がりはしないかな、と思ってな。上司だって、たびたび組合活動で抜ければ、これまでのように戦力としてみなせなくなるだろうし。組合活動に時間を費やすなら、その時間や労力で新たな仕事や勉強に挑戦してキャリアを磨くのが、銀太郎には必要ではないかとも思うんだよ」 そう言われてみると、伯父さんの意見はもっともに思えてくる。 「伯父さん、大丈夫だよ。一年で交代だからさ」 銀太郎は、伯父や伯母の心配に、ここでもこう答える以外なかった。 「そうだわ、ケーキ買ってあるのよ。食べましょ、食べましょ」 伯母の話題転換のおかげで、それからは組合活動の話に戻ることはなかった。 その夜、銀太郎は晩御飯をご馳走になって、新秋津から大宮に抜け新幹線で宇都宮の寮へと帰った。 組合員の立場から見た「目標管理・人事考課」傾向と対策 著書:西尾 力 / A5版 77頁 定価 500円(税込) 【『被考課者訓練®】のススメ】個別労使交渉の手引き書!! 組合員の側から、この能力・成果主義的人事制度を正しく理解し、有利に活用するノウハウが網羅!! ※『被考課者訓練®』はj.union 株式会社の登録商標です。

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